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物納手続きと条件整備
平成18年4月1日以降の相続開始分から物納制度が改正されました。
主な改正点は、物納申請要件として『物納許可限度額』が明確化されたこと、物納申請書及び物納手続関係書類の提出が相続申告期限までと大幅に短縮されたこと(もし書類提出が相続申告期限までに間に合わなければ事前に3か月以内の日を決めて延長の届出を要する)、物納による収納まで利子税がかかるようになったこと(審査期間除く)、届出により物納整備期間を延長しても最長1年までとされたこと、等です。
改正以前の物納申請要件に比べると、全体として厳しくなったような印象を受け、物納申請しても却下されてしまうのではないかとの納税者サイドの懸念もあってか、平成18年4月以降の物納申請件数は激減しています。
しかし、相続財産に借入金がある場合は、「相続した現金・預貯金等」にこの借入金が考慮されます。たとえば、相続した現預金よりも借入金が多ければ「相続した現金・預貯金等」は計算上マイナスになるため、『金銭納付を困難とする理由書』に記載すべき「納期限(又は納付すべき日)までに納付することができる金額」をゼロにすることができるのです。

『物納許可限度額』を多く計上したいなら、この「納期限(又は納付すべき日)までに納付することができる金額」を借入金でなるべくゼロにするか、ゼロに近づけることが大きなポイントといえます。
また、「生活費及び事業経費」の計算は前年度の給与・収入ですから、相続した不動産収入は考慮されませんし、「臨時的収入、臨時的支出」は確定しているものでなければ記載する必要はありません。

物納が厳しくなったから、最初から物納申請をあきらめてしまう方の話をよく耳にします。
しかし、相続財産構成、相続人の収入状況等によっては改正後でも十分利用できる制度です。

1)物納許可限度額

相続税の支払い方法は、金銭納付が原則です。
もし納期限までに金銭で一時に納付することが困難な場合には、その困難な金額を限度として、一定の要件の下で年賦による分割納付(延納)が認められますが、物納は延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内でしか認められません。
金銭納付すべき「現金納付額」には、相続により取得する現預金の他、相続人が保有する現預金も含まれますので、相続する財産に現預金がなくても、相続人に現預金があれば原則としてその現預金も相続税の支払いに充てなければなりません。

■Ⅰ延納許可限度額の計算方法

①納付すべき相続税額
現金納付額 ②納期限において有する現金、預貯金その他の換金が容易な財産の価額に相当する金額
③申請者及び生計を一つにする配偶者その他の親族の3か月分の生活費
④申請者の事業の継続のために当面(1か月)必要な運転資金(経費等)の額
⑤納期限に金銭で納付することが可能な金額(これを「現金納付額」といいます。)
(②-③-④)
⑥延納許可限度額(①-⑤)

■Ⅱ物納許可限度額の計算方法
①納付すべき相続税額
②現金納付額(上記Ⅰの⑤)
③年間の収入見込額
④申請者及び生計を一つにする配偶者その他の親族の年間の生活費
⑤申請者の事業の継続のために必要な運転資金(経費等)の額
⑥年間の納付資力(③-④-⑤)
⑦おおむね1年以内に見込まれる臨時的な収入
⑧おおむね1年以内に見込まれる臨時的な支出
⑨上記Ⅰの③及び④
⑩延納によって納付することができる金額{⑥×最長延納年数+(⑦-⑧+⑨)}
⑪物納許可限度額(①-②-⑩)


2)物納申請書及び物納手続関係書類の提出
相続税の納期限または納付すべき日までに(「提出期限」という)、『物納申請書』『金銭納付を困難とする理由書』及び『物納手続関係書類』を所轄の税務署へ提出しなければなりません。 提出期限までに物納手続関係書類を提出できない場合には、後記4)のとおり、物納手続関係書類の提出期限の延長を申請することができます。 もし『物納申請書』が提出期限に遅れて提出された場合、その物納申請は却下されます。

■Ⅰ物納申請時に提出する書類
  • 『物納申請書』
  • 『物納財産目録』
  • 『金銭納付を困難とする理由書』(説明資料を含む)
  • 物納申請財産が物納劣後財産の場合『物納劣後財産等を物納に充てる理由書』
  • 物納手続関係書類
  • 物納手続き関係書類が提出できない場合『物納手続関係書類提出期限延長届出書』

■Ⅱ物納手続関係書類(一部抜粋)
  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図(座標標記のある確定測量図)
  • 境界標の写真一式
  • 境界線に関する確認書
  • 電柱の設置に係る契約書等の写し
  • 土地上の工作物の図面
  • 建物工作物等の配置図
  • 国有財産借受確認書土地賃貸借契約書(無断増改築禁止明記、貸主に不利な特約がないこと)
  • 賃借地の境界に関する確認書
  • 敷金に関する確認書
  • 物納申請前3か月間の地代の領収書の写し
  • 工作物等の越境の是正に関する確約書
  • 建物等の撤去及び使用料の負担等を求めない旨の確約書
  • 通行承諾書
  • 相続人代表借地権者確約書(借地権者の相続証明書類一式添付)
  • 借地権等に関する確認書
  • 借地権の使用貸借に関する確認書

■Ⅲ必要な不動産整備(一部抜粋)
  • 確定測量(民民及び官民境界確定、地積更正登記、分筆登記)
  • 越境物の改善(枝打ち、工作物の撤去等)
  • 土砂等の流出の恐れがある場合は擁壁等の設置
  • 不法投棄物、地中の産業廃棄物、倒壊の恐れがある工作物の撤去
  • 空地は、出入りできないよう柵等で囲う


3)物納に充てることのできる財産の種類と順位

①物納申請者が相続により取得した財産で日本国内にあること

②管理処分不適格財産でないこと

■管理処分不適当財産の代表例
  • 担保権の設定の登記がされている不動産
  • 権利の帰属について争いがある不動産
  • 境界が明らかでない土地
  • 隣接地の建物又は工作物が境界線を越える当該土地
    (軽微な越境の場合所定の書類提出ある場合を除く)
  • 土地使用収益権の設定契約の内容が、設定者に著しく不利な当該土地
  • 他の土地に囲まれて行動に通じない土地で通行権の内容が明確でないもの
  • 当該借地権を有する者が不明である貸宅地(底地)
  • 共有不動産(共有者全員が物納申請する場合を除く)
  • がけ地、狭小地、不整形地で、これらの土地のみで使用することが困難な土地
  • 私道(他の物納申請財産と一体として使用されるものを除く)
  • 管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
  • 風営法に規定されている風俗営業又は性風俗関連特殊営業に供されている不動産
  • 暴力団の事務所その他これに類する施設に供されている不動産
  • すでに存在しない建物の滅失登記がなされていない土地
  • 廃棄物その他の物が除去されていない土地

③物納申請財産の種類及び順位に従っていること

 順位 物納に当てることのできる財産の種類 
 第1順位  ①国債、地方債、不動産、船舶
 ②不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
 第2順位  ③社債、株式(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、   短期社債など除く)、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
 ④株式(特別の法律により法人の発行する出資証券を含む)のうち物納劣後財  産に該当するもの
 第3順位  ⑤動産

④物納劣後財産に該当する場合は、他に適当な価額の財産がないこと

■物納劣後財産の代表例
  • 地上権、永小作権若しくは工作を目的とする賃借権、地役権または入会権が設定されている土地
  • 法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地
  • 土地区画整理事業等の事業が施行され、その施行に係る土地につき、法律の定めるところにより仮換地の指定又は一時利用地の指定がされていない土地
  • 現に納税義務者の居住の用又は、事業の用に供されている建物及びその敷地(当該納税義務者が当該建物及びその敷地について物納の許可の申請をする場合を除く)
  • 劇場、工場、浴場その他の維持又は管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地
  • 建築基準法第43条第1項に規定する道路に2m以上接していない土地 市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
  • 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含む。)
  • 過去に生じた事件又は事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれのある不動産及びこれに隣接する不動産

⑤物納に充てる財産の価額は、原則として、物納申請税額を超えないこと

4)物納手続関係書類の提出期限の延長

①『物納申請書類』及び『物納手続関係書類』一式の提出期限は相続開始から10か月以内。
②①の提出期限までに書類一式すべて提出できない場合、3か月の範囲内の日を期限とする『物納手続関係書類提出期限延長届出書』を提出して、書類の提出期限を延長することができる。
③②再延長は可能で、延長回数に制限がないが、一度の届出によって延長できる期間は3か月(3か月以内であれば何日でも可能。)。但し、①の物納申請期限(提出期限)から1年を超えることができない。
④書類提出期限を延長する場合、利子税が発生する。


5)物納手続関係書類の補完期限の延長

①提出された物納手続関係書類に記載内容の訂正や不足書類がある場合、税務署長から書類の訂正や追加書類を訂正するように「補完通知書」が送付され、20日以内(これを「補完期限」という)に補完通知内容を履行しなければならない。
②補完期限までに物納手続関係書類に記載内容の訂正や不足書類を補完できない場合、3か月の範囲内の日を期限とする『物納手続関係書類補完期限延長届出書』を提出して、書類の提出期限を延長することができる。
③②再延長は可能で、延長回数に制限がないが、一度の届出によって延長できる期間は3か月(3か月以内であれば何日でも可能。)。但し、①の補完通知書を受けた日の翌日から1年を超えることができない。
④補完期限を延長する場合、利子税が発生する。

6)措置期限の延長

①現地調査を行った結果、物納申請財産に何らかの整備が必要と判断した場合、税務署長から、期限を定めて、収納するために必要な措置を求める通知書(これを「措置通知書」という)が送付され、指定された期限までに必要な措置を完了させなければならない。
②措置期限までに物納申請財産の整備ができない場合、措置期限までに3か月の範囲内の日を期限とする『収納関係措置期限延長届出書』を提出して、措置期限を延長することができる。 ③②再延長は可能で、延長回数に制限がないが、一度の届出によって延長できる期間は3か月(3か月以内であれば何日でも可能。)。但し、①の措置通知書を受けた日の翌日から1年を超えることができない。
④措置期限を延長する場合、利子税が発生する。

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